森博嗣「自由をつくる 自在に生きる」(集英社新書)
私が大好きな作家の1人です。もともとは本格推理作家として登場したのですが、その後、エッセイやギャグ小説や幻想系小説、さらには詩集から写真集まで発表しています。しかも本職は工学部の大学教授です。さまざまな引出を持っている人です。多作な人でもあり、私が持っているだけでも、今数えたら62冊目でした。
本書はこの人には珍しく、最初から最後まで抽象論に終始したものです。もちろん、意識してそうしたのでしょう。「具体的すぎる論は人と共有できない。抽象論こそが本質だ」とは、この人があちこちで書かれていることです。お題は「自由とは何か」。
自由といえば、体制からの自由、支配からの自由、規制からの自由というのをすぐ連想しますが、この本が提唱しているのは、自分自身の自分に対する支配からの自由こそがその根源であるということです。
人は、意識的にせよ無意識にせよ、決めつけや思い込みやレッテル貼りやこだわりによって自分の可能性を狭めている、無垢な感性を確保することによってその枠組に囚われないようにすることが真の自由を生む、という内容です。重要な視点であり、もって銘したいと感じます。
ちなみに、「ブログの罠」と題して、ブログを書いている人は、勝手に人の視線を意識して、ブログに書けそうなことだけ考える日々を送るようになる危険性がある、ということも書かれています。このコーナーの書き始めにこのような助言をいただいたのはまことに貴重でした(笑)。
最後に、特に印象的だった一節を引用しましょう。
「僕が思いついたのは、「若者は、年寄りの真似をすることで、早く大人になろう、大人として認めてもらおうとしている」という理屈である。年寄りほど、難しい顔で「つまらないからやめておきなさい」と言いたがる。子供から見ると、大人というのは、「それは駄目」「それは危ない」という否定指向のシンボルなのだ。だから、若者は自分にとって危険なものを早く見極め、それができたと主張することで、「豊かな経験」的なものをアピールしようとしている。自分も一人前の大人であることを無意識に主張している姿なのだ。」
(2010/03/02)





