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理事長所信
Policy

根付く 拡がる 核となる

はじめに

私は、3 年前、ある青年に出会いました。彼は、家庭に様々な問題を抱える子供の心のよりどころを、簡単にアクセスできる WEB上につくることを目的として活動を行っていました。活動を始めた当初、彼の周りには同じような境遇をもった同年代の仲間が数人いるのみでしたが、自身の不遇な環境を恨む思いや、それでも家庭を誇りに思う複雑な感情など、経験と心境を広く語り、次第に共感する仲間を増やしていきました。そして彼は、子供たちのための居場所としてどういう形が適切か模索し、皆に対して実直に「知恵を貸してほしい、力を貸してほしい」と呼びかけていました。活動の輪は、同年代の学生にとどまらず、教育関係や心理職、医療関係、法律関係など、あらゆる専門職にも広がっていきました。彼の「不遇な環境にありながらも強く生きている子供たちの支えになりたい」 という想いがその活動を通して伝わり、共感を呼び、自然にその輪が広がっていったのです。子供たちのための居場所づくりは実現し、今も広がり続けています。

彼の周りにはどうして人が集まったのでしょうか。 彼は自身の経験から、同じような境遇をもつ子供たちが求めていることを理解し、寄り添う力がありました。「助けてほしいわけじゃない。わかり合える仲間がいる場所で気持ちを吐き出したい。」という感覚は、自身の経験に加え、他者に寄り添ったからこそ知りえることでした。さらに、彼は自分の想いを恥じることなく、臆することなく、言葉や活動といった形にする行動力をもっていました。彼の寄り添う力と行動力が共感を呼び、活動が広がっていったのです。

私たち JAYCEE も彼と同じように在るべきです 。私たちは地域の皆と手を取り合って運動を起こすことで、理解を深めることができます。理解を深めた私たちの運動は説得力を増し、理想像は多くの人に広がっていくはずです。社会を変革する思想や運動は、最初は小さなきっかけに過ぎないことも多いでしょう。私たちが起こした運動が小さなものであっても、それが地域を深く理解し、説得力のあるものであれば、それは明るい豊かな社会に向かう大きな動きとなるはずです。

近畿地区大会奈良大会を経て

2024 年 7 月、奈良 JC が主管となり近畿地区大会を開催しました。今一度振り返ると、訪れた人たちが近畿各地の名産品を頬張り楽しんでいる姿や、 出展者や共催者の皆様からの「こんなに人が集まった光景は見たことがない」 といった感謝と驚きの声が思い出されます。私たちが得た達成感や感動は非常に大きなものでした。では、貴重な経験をした私たちは次に何をすべきでしょうか。私たちが起こす運動は、次の段階にどうつないでいくのかを強く意識することで、さらなる実効性を得られます。

大会を通じて、奈良JCは新たに地域とのつながりを芽生えさせると共に従来のつながりを強固にし、地域からの認知度を向上させることができました。これを好機として、一つ一つの運動に行政や各種団体、住民を巻き込み、より地域に広く深く根を下ろしていきましょう。そうすることによって、私たち自身が地域に対する理解を深めることができます。また、それまで関わることのなかった方々との橋渡し役となり、地域発展のハブとなることができます。

 

礎を築く

「何のために JC をしているのだろう。」「何のためにこんなに苦労しているのだろう。」目的が見えず義務感だけが残り、JC活動が辛いものとなってはいないでしょうか。それは仕事においても同様です。お金を稼ぐためにやっているのであって、仕事自体に意味は見出していない。 そう考えていては単に作業をこなすだけになり、真剣に向き合っていれば日々の仕事から得られたはずの喜びを取りこぼしてしまうことになります。

JCにおいて大切にされている一つ一つの事柄には先輩諸兄があらゆる失敗を重ねながら改善を加え、今の形になったものが多くあります。手間がかかるだけで何の意味もないように見えるものでも、そこには確固とした信念や想いが存在し、次々と新たな発見や学びが得られます。あらゆる出来事について、その趣旨を深く考え、些細なことからでも何かを得ようとする獲得意欲をもつことで、JC活動は色彩豊かなものとなります。そして、獲得意欲をもって JC活動を行うことができたとき、あなたが得たものはあなた自身の生活、人生に直ちに活かすことができるはずです。JCのために JCをするのはやめましょう。あなた自身やあなたの周りの人たちのため、あなたが存在する社会のために行うのです。

発信力ある JC

個人、団体の別に関わらず、SNSが情報発信の主要な手段として用いられるようになりました。奈良JCにおいてもSNSが主な発信手段となっています。ただ、SNSを用いることで、必ず多くの人に情報が届けられているとは限りません。漫然と情報を流し続けるだけでは、むしろ紙媒体よりも情報の受け手が少ない可能性さえあります。

人は認識を通じて興味を持ち、行動に移します。機能や効果がわからない商品を購入する人はいませんし、知らない催し物に参加することもありません。聞いたことのない団体に入りたいと思う人もいなければ、何かを任せようと思う人もいません。

私たちの想い、私たちの運動をより多くの人に届けましょう。多くの人に知ってもらうことで、私たちの理念は広く伝播し、これまでよりも効果的に運 動を展開することができるはずです。

 

新たな仲間に拡げる

自分で考えなくても指先一つで答えが導かれる時代となっています。AIが代わりに考え、情報を探すことさえも代行してくれる時代です。しかし、自分の行動は自分自身が決めるしかありません。

私は JC で考え抜く姿勢を学びました。社会課題がどこにあるのか、周りの人たちが満足するにはどうすればいいのか、あらゆる可能性を追求し、 目的を達成するために最大限の努力をして得られる喜びや新たな学びがあります。私はJCで表面に見えるものの裏にある思いや努力があることを目の当たりにしました。当たり前のことを当たり前にこなすことの困難さや、それをやり遂げるまでの葛藤、他者には理解してもらえない影の努力があることを知りました。 JC では貴重な成長の機会が幾度も与えられます。この機会を獲得しないなんてもったいない、そう思えるように伝えることが必要です。精一杯、説明して伝えましょう。 実際に体験してもらうことで伝わることもあるでしょう。こんな団体なら入りたい、この団体でやっていきたい、そう思ってもらうことで、入ってからも意欲高く取り組むことができるはずです。仲間が増えることで価値観が新たに増え、今までなかった切り口での解決策により運動に広がりがもたらされると同時に、私たち個人の成長のきっかけにもなるはずです。新たな仲間のため、地域のため、私たちのため、JCを伝えていきましょう。

 

子供の声に耳を傾ける

皆さんは「子供の意見表明権」という言葉をご存知でしょうか。これは、子供であっても意見を誰かに伝える力を大人と同等にもつべきだという考え方で す。私たち大人は、子供にとって良いと思う道を示すことは多いですが、彼ら彼女らの声に耳を傾けることができているでしょうか。意見を聞いてもらえなかった、ないがしろにされたという経験は、諦めることを早期に根付かせ、子供の成長を阻むことにもなりかねません。また、子供の意見を聞くことで私たち大人が気づきを得ることもあります。子供の意見は率直で遠慮がなく柔軟で、当たり前だけれど大切なことに気付かされ、大人の独善的な考えを改める機会にもなります。

私は、社会に対して希望を抱いた子供たちに、未来の社会を担ってほしい。すぐに諦めることなく、意見を発することのできる力強い子供たちに未来の社会を担ってほしい。そう願います。怖がることなく、遠慮せず、子供が自分を取り巻く環境について意見を述べられる機会を造りましょう。そして、その意見に耳を傾けることの重要性を社会に伝えていきましょう。

 

古都奈良の可能性

奈良には古くから親しまれてきた文化が数多くあります。多くの文化が今まで忘れ去られることなく残り続け、残し続けてきたことには意味があります。単純に、このような文化があった、という史実を学ぶためだけではありません。いまだに人に感動を与え、新たな発見や発想をもたらすからです。また、時代を経て、その時代に適応して形を変えつつ進化してきたことも残り続けた理由であり、その工夫が私たちに気付きを与えてくれます。古都奈良にいかなる可能性があり、私たちがそこから何を得ることができるのか、改めてその価値を見つめなおし広く伝えることで、ずっと先の未来で新たな感動や新たな発見を与え続けるはずです。そして、奈良のまちに住み暮らす私たちの誇りを再認識できるはずです。

 

さいごに

「どうすればよくなるか」この単純な思考こそがJCで学ぶことのできる最強のポジティブ思考であると私は信じています。

あなたが経験するあらゆるものに疑問を感じてください。それと同時に、理解するために考え抜いてください。理解できないものを「ダメだ」と切り捨てるのではなく、自分なりの意義を与え、活かす方法はないか、どうすれば変えられるか模索してください。

考え抜き、より良くするために必死で模索したあなたの行動には、自信と説得力が備わっているはずです。自信と説得力に裏付けられたあなたの行動には、 牽引力が備わり、多くの賛同者・協力者と共に運動を拡げていくことができるはずです。

私たちはそうして拡げた運動の核となるのです。

一般社団法人奈良青年会議所
2025 年度理事長 米澤 弘朗